出生前診断における医師の過失と損害賠償責任 第2回 生まれてこない権利??

出生前診断における医師の過失と損害賠償責任 第2回
\ 生まれてこない権利??/

たとえば、このような話があったとします。
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A子さんが妊娠中に、お腹の赤ちゃんについて障害はないかを検査したいと思い、出生前診断を行いました。
医師による診断結果は、赤ちゃんに障害はないというものでしたが、実際に生まれた赤ちゃんは障害を持っていました。

診断の際、この医師になんらかの落ち度があったと考えられた場合、A子さんや生まれた赤ちゃんは、医師や病院に対して損害賠償請求を行うことができるのでしょうか。

※出生前診断の説明などは、前回投稿をお読みください。
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まず、ここで六法ちゃんには一つ気になることがあります。
よく考えてみるとこれは少し不自然な問題に感じるのです。

A子さんが障害のある子の出産を望んでなかったとして、生まれてきた赤ちゃんが「自分が生まれてしまったこと」についての損害賠償請求をする、というのは変ではないでしょうか?

そうなのです。
これらの請求では、親又はその子自身が、「医師の過失があっために、その出生を回避することができなかった。」という主張をすることとなります。
つまり、その子が出生した場合と中絶あるいは避妊等で出生しなかった場合を、親の立場から、あるいはその子自身の立場から、比較して損害賠償請求せねばなりません。
障害を持って生まれることと生まれないことを比較することとなり、親またはその子自らが、その生命の価値を否定することが前提となるという構造を持っています。

ここまで読んで、何やら居心地の悪さを感じた方もいると思います。
この問題は、法的な問題とともに、倫理的な問題を孕む難しい問題なのです。

この問題に関する訴訟及び議論は、主にアメリカにおいて発展していますが、日本でもこれまでにいくつかの同様の訴訟があります。

裁判所では、医師の過失が「妊娠前」であるか「妊娠後」であるかによってそれぞれに異なった判断がなされている傾向があります。

日本における訴訟の状況など、具体的な内容については、次回の投稿でお話しますっぽう!

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