裁判官も裁かれる??分限裁判とは

\ 分限裁判って何??! /

10月17日に、次のようなニュースがありました。

ツイッターで不適切な投稿をしたとして東京高裁から懲戒を申し立てられた同高裁の裁判官の分限裁判で、最高裁大法廷は17日、「裁判官に対する国民の信頼を損ねた」として戒告とする決定を出した。(毎日新聞https://mainichi.jp/articles/20181018/k00/00m/040/030000cより抜粋)

この裁判そのものについての話はニュースや他のサイトに譲るとして、今回、六法ちゃんは裁判官の身分保障についてお話ししたいと思います。

裁判官は、憲法その他の法律で手厚い身分保障を受けています。
手厚い身分保障とは具体的にどのようなことを指すのでしょうか?

まず、裁判官を辞めさせるには①分限裁判(憲法78条)、②弾劾裁判(憲法64条)、③国民審査(憲法79条2項。但し最高裁判所裁判官のみ)の3つによらなければならないことが憲法上規定されています。

次に、裁判官に何か非違行為があったとしても、裁判官に対する懲戒処分は、憲法上、裁判所しか行うことができません(憲法78条後段)。内閣や国会の判断で懲戒処分を行うことはできないんですね。
さらに、裁判官はその在職中、報酬が減額されないことが憲法によって保障されています(憲法79条6項、80条2項)。
最高法規である憲法で、報酬が保障されているのは、すごいことですね。
国会議員も裁判官と同じように憲法で歳費(報酬)を受け取ることが保障されていますが(49条)、裁判官のように在任中減額されないことまでは保障されていません。

それにしても、どうして裁判官はここまでの身分保障を受けられるのでしょうか?

そもそも、裁判所が法律に基づいて人権保障を全うするためには、時の権力からの介入や干渉を受けず、また安易に世論に誘導されることなく、裁判が行われる必要があります。
そのためには、それぞれの裁判官が高度に独立して職権を行使できる環境におかれていることが必要不可欠です。
そこで、憲法は裁判官の独立を強く保障するために、様々な身分保障の規定を設けているのです。

記事によれば、今回の裁判官には、戒告処分が下されたようです。
そもそも分限裁判で裁判官に課される可能性のある処分は、戒告もしくは一万円以下の過料しかありません(裁判官分限法2条)。
そう聞くと、どっちにしたってたいした罰ではないじゃないかと思うかもしれません。しかし、罰せられることにはかわりありません。
もしこの裁判の結果、裁判官が自由にものを言いにくい環境が出来上がってしまったらどうなるでしょう。
この裁判の結果、単にものが言いにくいというだけにとどまらず、裁判官が自由にものを考えることを控えるようになることで、裁判官の独立を危うくしてしまう可能性はないでしょうか。

憲法が裁判官の身分を強く保障した趣旨を考えてみたとき、私たちは、この裁判を、一裁判官に対する具体的な処分の問題ではなく、裁判官の独立という、より大きな視点で考えてみる必要があるのではないでしょうか。

SHARE THIS