六法ちゃん
前編では、「検察法改正によって、内閣から検察庁の人事権を握られてしまうことが問題だ」って教えてもらったけど、検察官も公務員だから、どこに問題があるのかがよくわからなかった。
その点が、検察官の強大な権限との関係で、問題になるんだよ。
ひまわり先生
結論から言えば、検察官と他の公務員を比べると、その権限が決定的に違うんだ。
ひまわり先生
六法ちゃん
何が違うの?
それは、検察官が起訴権限を独占しているという点だよ。
ひまわり先生
六法ちゃん
あ、聞いたことある!
六法ちゃん
刑事裁判を起こせるのは、検察官だけなんだっけ?
ごく限られた例外はあるものの、基本的には刑事裁判を起こすかどうかを判断できるのは、「検察官だけ」なんだ。
ひまわり先生
六法ちゃん
裁判の前に検察が証拠などを徹底的に調べ上げて、裁判で審理されるべき事件かどうかを判断しているんだね。
そう。だから検察は行政権に属するものの、「準司法的地位にある」と言われているんだ。
ひまわり先生
ところで、六法ちゃんは、会社で働いていたことがあったと思うけど、そのときは上司の指示に従っていたよね?
ひまわり先生
ギクッ!!!そこは秘密だったのに・・・まぁいいか
六法ちゃん
六法ちゃん
会社で働いていたときは、上司の言うことは絶対で、少しおかしいなと思っても仕方なく従っていたよ。
なぜ、おかしいと思っても従っていたのかな?
ひまわり先生
六法ちゃん
それは、悪い評価を付けて欲しくなかったからに決まっているよ。
六法ちゃん
お給料や将来の出世にも関わるし、何より、変な部署に左遷されたりしたくないもの。
そのとおり。
ひまわり先生
もし、直属の上司はもちろん、社長から直接に指示をされたら、なかなか逆らえないと思う。
ひまわり先生
人事権を握られるっていうのは、それくらい大変なことなんだよ。
ひまわり先生
六法ちゃん
うっ。思い出すと胸が痛い。
さらに、検察庁っていう組織は、上意下達の完全なピラミット型の組織で、出世競争は相当に熾烈だ。
ひまわり先生
そんな組織の幹部の人事権について、「内閣の広い裁量」が認められてしまった場合どんなことが起こるだろうか・・・
ひまわり先生
六法ちゃんにも簡単に想像がつくと思う。
ひまわり先生
六法ちゃん
検察官が内閣の意に反した捜査や起訴について消極的になってしまうってこと?
六法ちゃん
内閣が悪いことをしたとしても、検察官がそれに切り込むことができなくなってしまって・・・
六法ちゃん
結局、検察庁の持つ権限についても、内閣が好き放題にできてしまう・・・
六法ちゃん
でも、そんな恣意的な人事をすることはないって内閣総理大臣は言っているよ。
六法ちゃん
それを信じてもいいんじゃない?
百歩譲って、内閣総理大臣が言っていることが、本心だとしても、権力を握る人全員が、善人なわけでもないし、不公正な人事をしないわけでもないし、何より自分に不利になるような決定はなかなかしないんじゃないかな。
ひまわり先生
だから判断する人の主観を可能な限り排除する仕組みが必要なんだ。
ひまわり先生
特に、検察幹部の人事のようなセンシティブで重要なことは、権力を持つ内閣になるべく裁量が認められないような仕組みにしないといけないんじゃないかな。
ひまわり先生
六法ちゃん
けど、検察も強大な権力を持っているから、暴走してしまう可能性もあって、それを食い止める必要はあるんじゃないかな。
六法ちゃん
民意を受けて成立した内閣がコントロールする必要があるんじゃない?
たしかに検察も、今までの冤罪事件等を見ればわかるように、必ず正しいことだけをするわけではない。
ひまわり先生
だから、なんらかの形でコントロールする必要性があるというのは、先生も賛成だ。
ひまわり先生
けれども、民主的なコントロールという方法が正しいのかという点は、慎重な考慮が必要だと思う。
ひまわり先生
六法ちゃん
え?なんで?主権者である国民によるコントロールが及んでいるということは、国民の意見が反映されていて、何も問題はないんじゃないの?
あのナチスでさえも、当初は圧倒的な民衆の支持を得ていたことからも、民主的な方法が完璧ではないことがわかるはずだ。
ひまわり先生
いわゆる民主的なコントロールというものは、乱暴な言い方をすると、多数派による支配ということになる。
ひまわり先生
とすると、いわゆる民主的なプロセスでこぼれ落ちてしまう少数派と言われる人達も必ず存在するんだよ。
ひまわり先生
でも、その人たちの権利や主張がないがしろにされていいわけではないし、多数派に好き勝手させていいわけでもない。
ひまわり先生
司法には、そのような多数派による支配からこぼれ落ちた少数派の権利を擁護したり、多数派の横暴を抑制したりするという大きな役割がある。
ひまわり先生
とすると、準司法的存在である検察官について、単に民主的な方法でコントロールするべきという結論には簡単にはならないということがわかるだろう。
ひまわり先生
六法ちゃん
なるほど・・・。多数決で決まればそれが正義ということもなく、危険もあるってことも勉強になった。
六法ちゃん
検察庁法の問題って、いろいろな論点を含むものだったんだね。
六法ちゃん
もっと、この問題について詳しく知りたくなっちゃった。
今回の改正に反対する検察幹部OBの人達も意見書を提出しているよ。
ひまわり先生
検察の元幹部が意見表明することはとても珍しいことなんだ。
ひまわり先生
とても読み応えのある文章だから、興味のある人は是非読んでみてほしい。
ひまわり先生
こちらのリンクから全文が読めるようになっているよ。
ひまわり先生