シリーズ『M&Aと弁護士の仕事』【その2】

シリーズ『M&Aと弁護士の仕事』【その2】

\    M&Aって何のこと?  /
\  担当弁護士は何をするの? Ⅱ /

前回(1/12投稿)では、「M&Aに弁護士がどのように関わるか」という点を説明しました。

その中で、M&Aをする場合、(1)「どのような会社」を、(2)「いくら」で、(3)「どのような条件」で購入するかという点が重要だと説明したのですが、今回はこのうち(1)「どのような会社なのか」ということを確認するために弁護士がどのような調査を行うのか確認してみましょう!

ちなみに、このような弁護士が行う調査のことは、「法務デュー・ディリジェンス」(適正評価手続)と呼ばれていて、弁護士の間では「法務デューデリ」、「法務DD」と略すこともあるようですよ。

(M&Aにはいろいろな形式がありますが、今回は、基本的に株式譲渡や合併等の場合を想定して説明します。)

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弁護士がM&Aにあたり、M&A対象の会社を調査する範囲はこのような点です。

1つめは、「 会社の組織、株式に関わる点」です。

これは、株主総会や取締役会等が会社法に則って運営されているかや、その会社の株式を保有しているのが誰なのか、という点です。

2つめは、「会社の事業活動に関する点」です。

会社の事業活動を制限するものの有無の確認、具体的には取引先との契約書に会社の活動を制限する条項が規定されていないか、取引先を不当に利する条項が規定されていないか等の点や、事業提携契約において競業を禁止する条項(競業避止義務条項)がないか、等についてです。
M&A後に実際に事業を行う上で障害となるかもしれないので、事前にチェックする必要がありますね。

3つめは、「労働法に関わる点」です。

従業員に対する未払賃金がないかや、労基署からの指摘がないか、なども調査します。
未払残業代が全従業員の総額となる場合、かなりの額に及ぶことも多く、会社にとって致命的なリスクになることもあり得ます。

4つめは、「 許認可・コンプライアンスに関わる点」です。

事業遂行する上で必要な許認可・登録・届出等について問題は無いか等の確認(例えば介護施設を運営している会社が、許認可等を適法に取得しているか等)。
事業の許認可が取れていない場合、その事業の継続ができなくなってしまうので、M&Aをすべきではない会社かどうかを、事前の調査でハッキリさせておくのですね。

5つめは、「紛争等に関わる点」です。

会社が大きな紛争(裁判などの法的な争い等)を抱えていないか、抱えている場合には損害賠償はいくらくらいになるのか、今後の事業遂行にどのような影響を与えることはないか等の確認をします。
紛争が顕在化した場合、高額な損害賠償を支払う必要が生じたり、また、事業継続が困難になったり、評判低下等のリスクがあったりするからです。

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以上、M&Aというと、他社を買収することによって、自社にどのくらいのプラスがあり、シナジーが発生するのか等、事業や会計関係を確認する必要が重要だというイメージがあったのですが、法律的な点も重要だということがわかりました。
また一見、経営がうまくいっているような会社でも、労働問題やコンプライアンスなど、思わぬところから大きな問題が生じてしまう可能性があることや、かなり細かく調査を行うことにも、六法ちゃん、びっくりです。

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